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バックパッカーの旅Ⅰ(東京~アテネ)

バックパッカーの旅Ⅰ(東京~アテネ)

ジョセフ・ハウスの団欒

                ≪十月二十三日≫ ―邇―

   大使館内のレター・ボックスを見る。

  Y.I.からの手紙が入っていた。

  日付は、十月十七日。

  手紙には、台風17号による、田舎の被害やら秋祭りのことが綴られてい

  る。

   俺のことを・・・・”あなた”と書いてある。

           
           ・・・・・・・・・・・・・・
 
           ヒッチハイクも終わり、これからがいよいよ本格的

          な勉強に入るのですね。遠く離れた日本の国から応援

          しています。頑張ってください。

             では今日はこの辺で失礼します。

              お身体にはくれぐれも注意してくださいね。

                          Y.I.より

                    *

   午後からは、天候も悪く部屋の中に篭もって・・・読書。

 ミステリーものを二冊読破。

 夕方には、皆が戻ってきて夕食の仕度に取り掛かる。

 今晩は、別のホテルに宿泊している、和智さん家族が加わり賑やかな夕食

 会となった。

   食事をしながら、みんなが体験してきた事をお披露目する楽しい夜に

 なったようだ。

 ジョセフ・ハウスの夜。

 ジョセフ・ハウスの団欒。

         新保君「アフガニスタンでの話しなんだけど、・・・・

            自分が乗っていたバスがさあ!・・・あのアジア

            ハイウエーの真っ直ぐな道を走ってた訳よ。周り

            は見晴らしの良い砂漠じゃ・・・ない。その驀進

            するバスの前を、道路の端っこを自転車で現地の

            人が・・・居るわけ。その人をよりによっ

            て・・・”ガツン!!”と轢いちゃったんだから

            ね。あの見晴らしに良い、真っ直ぐの道でよ。ビ

            ックリしたから。轢かれた人は、血で真っ赤よ。

            死んでいるのか、分んなかったけど・・・とにか

            く重症よ。それでもバスの運ちゃん・・・逃げよ

            うとして、そのまま走り出したんだけど・・・乗

            客たちが、ブーッ!ブーッ!ブーイングよ。運ち

            ゃん、悪いと思ったのか、やっとバスを停めて、

            隣の町まで運んだんだから。それから後のことは

            良く知らないけど・・・酷い話だよね!運ちゃ

            ん、居眠りでもしてんじゃないかと・・走ってい

            る間中心配してたんだから。」

   目を輝かせて、体験談を語って聞かせる。

 テッシンと千春は、イスタンブールのグンゴー・ホテルで、南京虫に襲わ

 れ、全身500箇所以上やられたと言って、まだ痕が残る身体を見せられたの

 には参った。

   やられた本人より、見せられた我々のほうが、痒くなりはじめるほど

 酷い痕が残っていた。

           俺 「アフガニスタンやパキスタンでやられずに、

             ギリシャに近いイスタンブールでやられるなん

             て、テッシンらしいじゃん。」

         テッシン「そうかて、しかたないもん。」

           和智「グンゴーじゃなく、アフガンで食いついた南

             京虫が、グンゴーでやっとお前の皮膚を食い破

             ったんじゃないのか!」

         テッシン「そんな!!酷い!僕の皮膚はそんなに硬くあ

             りませんよ。」

  ワーワー・ガヤガヤ・・・・ジョセフ・ハウスの夜が更けていった。


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